研究活動・成果

革新材料

No.19熱可塑性ランダムシート「Flexcarbon」

概要

本事業において、様々な構造材料に適用可能とするために、大量生産可能で低コストな中間基材が必要とされています。その中で、CFRP製品の量産化を目標とし、かつ品質と成形性を両立する材料「熱可塑性ランダムシート」の開発及び量産技術の開発を行いました。この成果は、インフラ分野だけではなく幅広い産業分野で適用可能なことから、最初の適用例として、陸上競技用シューズや労働作業補助装具に採用され製品化されました。現在、さらに用途展開を進めています。

熱可塑性ランダムシート「Flexcarbon®(フレックスカーボン)」とは、従来の炭素繊維複合材料では成し得なかった、複雑形状成形性・高強度を同時に実現し、かつ量産が可能な画期的な製品(プレス成形用シート)です。

本事業の研究開発成果として、サンコロナ小田の既存糸加工業で培った繊維加工技術と樹脂含浸技術を用いて製造した炭素繊維UDテープ片を、均質に分散・散布・積層する技術の開発と、ダブルベルトプレス機を用いた連続シート製造技術により、熱可塑性ランダムシートとシート量産技術を確立しました。

本研究で開発したFlexcarbonは、国内スポーツ用品メーカー株式会社アシックスの陸上競技用シューズ用CFRP製ソールに採用され、2020年6月より販売されています。本製品は、地面とのグリップ性を高めるハニカム様の意匠とソールを、プレス成形により一体成形されたCFRPソールを搭載しています。従来の金属製スパイクピンを有す陸上競技用シューズに比較し、軽量化とピンを無くすことにより、接地の際にピンが刺さってから抜けるまでの時間とエネルギーロスを軽減した構造を持った競技用シューズが実現しました。


熱可塑性ランダムシートの高い賦形性を示す陸上競技用シューズソール部分断面写真および同シートがソール部に採用されたピンなし陸上競技用シューズ

併せて、アルケリス株式会社の労働補助装具「アルケリスFX」のスネモモ部品に採用され、CFRP部品の搭載により片足2.3㎏と軽量化を実現しました。


熱可塑性ランダムシート成型部品が採用された労働補助装具(アルケリスFX)

陸上競技用シューズ・労働補助装具は、生産性の高いプレス成形により、市場の求める形状・物性・品質を実現できたことから、実用化に至っています。